朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第331回2017/12/6

 二代目半二郎が思い描いた俊介と喜久雄は、今ここで言葉を交わしている二人の姿だったのかもしれない。
 喜久雄と俊介、三代目半二郎と半弥が、ここに到るまでに経験した苦しみを思うと、役者というのは過酷ななものだと思う。
 どんな人の人生も、苦しさを重ねなければ、過去を懐かしく感じることはできないのだと、この小説を読み、思う。

 「女たちの忠臣蔵」と言えば、喜久雄と俊介の経験の裏には、春江、市駒、彰子、それに綾乃がいる。