朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第335回2017/12/10

 この『春興鏡獅子』の舞台の時に、喜久雄と俊介は三十代と四十代の境目ということになる。ここから、十年、二十年経つとどうなるか。俊介の「唸るほどに粋」はますます磨きがかかりそうだ。そうはいかないのが、喜久雄の「惚れ惚れするほど美しく」の方だと思う。喜久雄の美しさは、天賦のものが土台となっている。だから、年齢とともに衰えるのを防ぎようがないと思えるのだが、どうだろうか。

 今回の二人の舞台の描写は、豪華で美しい。だが、観客の大喝采があるとはいえ、二人が舞台から去る場面で終わっているのは、何かを暗示していそうだ。