朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第338回2017/12/14

 夜の街での徳次人気、なぜなのか。夜の街で羽振りが利くと言えば、先ずは金離れがよいことだろう。三代目半二郎や弁天は、言うまでもなく湯水のごとく金を使うであろうが、徳次はそのおこぼれに預かっているにすぎないはずだ。
 徳次は、羽振りがよいのではなくて、「贔屓」され、「好感」を持たれるということのようだ。
 徳次は、喜久雄や弁天と自分の関係を鼻にかけない、夜の街の女性を見下さない、なによりも性格が明るく話上手、酒の飲み方がきれい、などいろいろと考えられる。しかし、やはり理由はよくはわからない。

 実際、夜の街での徳次人気、若いころからのことではございまして、銀座だろうが祇園だろうが博多だろうが、いろんな男たちを見てきている夜の女たちの目には、徳次が違って見えるようでございます。
 
 男と生まれたからには、こういう人になりたい。たとえ、今からでも徳次の人気に近づく方法はないものか。