苦しい立場に追い込まれた時、主人公の喜久雄は文句を言わず、じっと耐え、そこに魅力を感じる。
 ところが、人気が出て、うまく回っている時の主人公にはどうも魅力を感じない。理由の一つは、主人公が苦境から這い上がる時は、いつも他からの力に救われているからだと思う。
 長崎での親の仇討ち失敗の時は、教師の尾崎に救われた。隠し子騒動と千五郎から許してもらえず、役者廃業かというところまで追い込まれた時は、彰子と新派の大看板、曽根松子に救われた。辻村逮捕の騒動で、新派に出演できなくなった時は、千五郎に救われた。
 今の喜久雄の人気も、俊介との共演と竹野の働きの要素が大きい。また、娘の綾乃を立ち直らせたのは、徳次と春江だ。
 こうやって、振り返ると、主人公の成功は他力本願ばかりのように見える。