朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第343回2017/12/19

 この小説の脇役的な登場人物にはある特徴がある。その人物が関わる事件にどんな決着がつくのだろうと期待していると、決着が分からぬまま、その件が終わりになってしまう。だから、その脇役もその場面だけで後は登場しなくなる。ところが、その脇役について生い立ちや背景が丁寧に描かれている場合があった。
 喜久雄と春江の刺青を彫った彫り師の辰42回感想は、戦後の典型的な人物として描かれていた。しかし、その後は全く登場しない。
 体育教師尾崎は、喜久雄の運命を決める動き65回感想その2をした。しかし、喜久雄が大阪に出て来てからは、一度登場しただけだった。
 『太陽のカラヴァッジョ』の清田監督のことも、鶴若のテレビのお笑い番組出演のことももうこれからは触れられないのかもしれない。そうでありながら、清田監督も鶴若も忘れられない登場人物だ。

 徳次は、綾乃のことはもう忘れたかのように、喜久雄本人に緊張感が不足していることを心配している。