朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第45回2017/12/1 第8話 また夜が明けるまで⑥

あらすじ
 文子は、不登校の生徒の家で、その生徒、棚野に、モルゲン土佐のクラブとしての停滞ぶりを一方的に話し続ける。そして、我に返り、棚野にそんなことを話したことを後悔し、自宅に戻って、さんざん呑んだ。
 また、自分がモルゲン土佐のことを考えたくないあまり、遠藤忍さんのことを利用したのだと思う。 
 しかし、その遠藤さんは、上機嫌で文子が案内したひろめ市場で鰹のたたきを食べてくれている。
 忍は、龍馬像も見たし、鰹も食べたので、もう試合は観ずに東京に帰ってもいいかという気分になる。広瀬先生も、忍自身も試合を観るのは、明らかに気が重い。だが、結局試合に行かなければならない。二人は、スタジアムに入る。
 試合が始まる。開始早々から、土佐が何度もシュートチャンスを作るが、得点には結びつかない。浜松がようやくフリーキックを獲得するが、それも点にはならない。前半は、0-0で終わる。
 前半が終わっても、忍は、席に縫い付けられたようになり、なかなか動けないでいた。

感想
 応援しているクラブの不振が、文子の教師としての仕事にまで、影響していた。しかし、その不登校生徒は、広瀬先生のその話を馬鹿な話と受け取っただろうか。案外、その話が、筋の通った説得よりも、棚野という生徒の気持ちに響いたのではないか、という気がする。
 忍は、自分が応援に行けば、浜松が負けるという感覚から抜け出せずにいる。もっと素直に、応援が応援する選手に届く、と考えた方がいいのにと思う。