朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第351回2017/12/27

 決着のつかない筋書きを先送りするように、『国宝』が、新しい章「第十五章 韃靼の夢」に入った。
 多くの事を先送りして、連載小説としてどうなるのだろうか?決着がついていないと、思う事を挙げてみる。
①源吉は命に別状はないと言うが、舞台に戻れるのか?また、幹部役者昇進は実現するのか?
②俊介の体の異変、足先が冷えることは深刻な病気の前兆ではないのか?
③喜久雄の胡弓の腕は、師匠から舞台に立つことを許されるまでに上達したのか?
④鶴若がテレビのお笑い番組で受けていた仕打ちは、その後どうなったのか?
⑤綾乃は、その後も春江の所にいて元気にしているのか?
⑥徳次が指を詰めて、綾乃を救ったことを、綾乃本人と喜久雄は知っているのか?
⑦俊介と春江は、長男豊生を亡くしてから、何をしていたのか?また、松野なる老人は何者か?

 小説冒頭からの先送りもある。
 辻村が、喜久雄の父、権五郎を裏切ったのは、権五郎の過去の教えに従ったからなのか?そして、最大の疑問も残っている。喜久雄は、父の死の真相を知るのか?
 いくつかの疑問が、どこかで絡み合って、一挙に決着するのであろうか。それとも、疑問の答えはそれぞれに任されて、『国宝』は大団円を迎えるのであろうか。
 今までの流れから言うと、人生には原因もなければ、結果もないというように、余韻を残して幕が閉じられることもあるだろう。