朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第回2017/12/28 

 極道の親分の一人息子、人気歌舞伎役者の御曹司、親も身寄りもない浮浪児、世の中では圧倒的に珍しい存在だ。
 今回登場したのは、「粋な旦那衆の一人」と、その夫人、しかもその夫人は、「箱根の美術館をフランス大使館と共同でやって」いると言う。俊介のご贔屓の一人、西嶋さんは、初役のお祝いとして、百万円をポンと出したようだ。(346回)この西嶋さんといい、今回の矢口建設の若社長夫妻といい、昭和の人とは言いながら、私には想像すらできないような暮らしをしているようだ。
 歌舞伎は、こういう富裕層に支えられている一面があるのだろう。それと同時に、マツのような人を惹きつける面もあるのだから、幅の広い観客を持つ芸能と言える。