朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第358回2018/1/4

 ようやく春江の長崎時代が語られた。春江の生まれと育ちがここまで描かれなかったのには、理由があるのと思う。おそらくは、彼女の過酷な生まれと育ちは、ストーリー展開にとって、それほど重要ではないのであろう。
 それよりは、松野のことを疎ましく思っている春江がこれからどう出るかが、この小説にとって、一つの鍵になると感じる。
 春江が、松野のことをどう思い、どう対処するかに注目する。それは、俊介が無事に同時襲名をやり遂げるかどうかにもかかっていると思う。