朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第363回2018/1/9

 喜久雄と徳次の言葉の交わし合いが心に沁みる。
 
 この二人、似通ったところがある。生みの母が被爆者だ。また、それぞれの実母は、辛い状況の中で死んでいる。
 喜久雄には、妻と認知した子もいるが、役者が優先で家庭があるとは言えない。徳次は、たくさんの女から慕われているが、未だに妻と呼べる人がいない。喜久雄も徳次も突き詰めれば独りなのだと思う。
 それだけに、離れがたいはずだ。離れたくないのに、別れなければならない時期が来ているのだろう。