朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第356回2018/1/11

 ごく普通の母親が現れた。今の春江は、我が子に期待する昭和時代の普通の母親になっている。なんだか、がっかりしてしまう。

 俊介と春江が、常識的で物分かりのよい人になればなるほど、不安が増す。喜久雄は、極道の息子だったことも、隠し子がいることも暴露され、そういうスキャンダルを乗り越えている。
 しかし、春江は、自分の親の事も、長崎時代の事も隠したままだ。俊介は、出奔中の薬に溺れていた事を誰にも話そうとしない。