朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第370回2018/1/16

①「語り手」を登場させる効果が感じられない。
②普通の小説というよりは、語り物、あるいは脚本の要素を持ち込もうとしているかと思わせたが、それが徹底していない。
③『太陽のカラヴァジョ』撮影の最終場面が書かれないが、喜久雄の心理的なダメージだけでは描写が足りないと感じる。
④辻村のことは、今後また語られると思うが、棚上げが長すぎる。
⑤俊介と春江の出奔中の暮らし、徳次の指、鶴若出演のテレビ番組、春江のバスケットボールの応援、綾乃と荒風の息子との酒席、ストーリーが広がるばかりで、読んでいて落ち着かない。
⑥昭和という時代背景がテーマの一つと思わせたし、昭和についての概念を覆す要素はあったが、バブル以後に時代が感じられない。