朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第371回2018/1/17

 俊介の父と喜久雄の同時襲名の時と、似通っている所がある。俊介の体の異変、チケットのために舞台以外の仕事が増える、テレビのインタビュー番組への出演、これがどう発展するか、分からない。
 読者としては、父の場合と同じように、襲名披露の舞台と前後して、俊介の病が見つかると思わせられる。しかし、そういう筋立ては、覆されることが多い。覆されるならよいが、そのまま棚上げされると、私はどうも落ち着かない。
 前回で、この作品を読んでいて不満に思う事を挙げたが、松野のことや荒風の息子のことや徳次の中国行きが、断片の描写で終わってしまうなら、不満は増しそうだ。