朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第372回2018/1/18

 前回の同時襲名(俊介の父と喜久雄)も、世間の話題をさらい、大阪歌舞伎界挙げての襲名披露公演になるはずだった。
 今回の俊介、一豊の同時襲名は、あの時を上回る盛り上がりぶりだ。前回との何よりの違いは、今の丹波屋に欠けるものがない所だ。
 だが、今回が華やかになればなるほど、幸子が心配したように、前回の襲名披露の舞台上の悲劇とそれに続く悲惨な運命を思い出してしまう。 
 襲名の口上に連なる喜久雄の口から、俊介の父のことが語られるのではないか。


 俊介が白虎を継いだので、喜久雄と俊介は、二代目半二郎の名跡を二人ともが襲名したことになる。しかも、一人の女、春江で二人は結ばれている。綾乃のことがあるので、喜久雄にとって、春江が過去の女と言うことにもなるまい。
 この幾重もの縁で結ばれた歌舞伎役者二人は、これから新たにどんな縁で結ばれていくのか。驚くような展開が準備されていそうだ。