朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第392回2018/2/8

 めぐり合わせというものは、あるものだ。
 俊介の父は、同時襲名披露の舞台で倒れた。俊介は、同時襲名披露の舞台は無事に終えたが、その後の公演で、病に襲われた。
 綾乃は、春江の下に預けられて、立ち直り、成長することができた。一豊は、父の危機の時に喜久雄に預けられた。
 ただし、俊介は父のように戻らぬ人とはならないだろうし、そうはならないことを願う。一方、一豊の方は、綾乃のように成長するか、危ぶんでしまう。