朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第394回2018/2/10

 以前から感じていた。喜久雄、俊介よりもマツ、幸子の方が、人物像がはっきりと感じられる。
 綾乃の背景もくっきりしている。役者に認知された子で、母は芸者。それなのに、綾乃は、男勝りで元気いっぱいの女の子。父のスキャンダルのネタとしてマスコミに取り上げられ、深く傷つき、非行に走った少女時代。徳次の命がけの行動で救われ、さらに、春江の面倒で見事に立ち直る。
 綾乃が春江の下で立ち直ることができたというのも、春江と綾乃のそれぞれの生い立ちを考えれば、納得できる。
 その綾乃が、出版社で自分の好きなことができる道を捨てて、好きな人、夫のために生きることを選んだ。

(略)そうか、この子はもう自分じゃなく、夫や生れてくる子供のために生きているのだ(略)

 おもしろい。感動する。