朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第398回2018/2/14

 順調に見えるリハビリの様子しか描かれていなかった。春江が俊介を支え励ます様子は見えなかった。一豊も父を心配する気配はなかった。その分を俊介一人が背負い込んでがんばり抜いたのか?
 俊介が出奔したのは、丹波屋の御曹司でありながら父の代役を務められなかったという自責と、周囲の非難に耐えられなかったからだろう。
 なにがなんでも完全な姿で復活しなければならなかったのは、白虎という名跡と一豊を含む丹波屋のためだろう。
 実力と人気は、獲得するまでは願望と希望の対象だが、それを手にすると、それを維持しなければならないという重荷になってしまうものなのか?