朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第402回2018/2/18

 共演の役者の芸の未熟さに苛立っていた喜久雄が、後進の役者に目配りができるようになった様子が描かれている。二代目半二郎が、喜久雄に素質を見出したように、喜久雄は自分の子の世代である武士に女形の将来性を感じたようだ。

 俊介は、足を切るしかなかったのだ。両足をなくしてはいるが、俊介がしっかりしていることが感じられる。

 廊下でからりとした笑い声が立ったのはそのときで、(略)

 笑い声の主は俊介だった。諦めねばならないことは、諦めきった俊介の心情が感じられる。

(略)慣れた様子で義足につっかけたスリッパを脱いで楽屋へ上がってまいります。

 辛さに堪えてリハビリに励んでいる様子よりも、義足を受け入れて、日常生活を送っている様子の方が安心させられる。