朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第405回2018/2/21

 喜久雄が、実力と人気の備わった歌舞伎役者となったことが感じられる。
 武士への声のかけ方が、粋だ。粋であって、後進の歌舞伎役者のことを育てようという狙いをきちんと持っている。
 俊介に対する応え方も、俊介だけでなく、一豊と春江のことも、興行面にも目配りが効いている。
 喜久雄自身の精進と、周囲の支えと、何よりも喜久雄の運命が、彼をここまで育て上げたのだ。今の喜久雄には、思い入れの深い「三代目半二郎」よりもより由緒のある名跡がふさわしいのかもしれない。