朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第407回2018/2/23

 手放しで喜びに浸っている喜久雄がいる。
 喜久雄がどんなに応援しても、荒風関の相撲人生は寂しいものだった。喜久雄が最も悲しい思いをさせられたのは、綾乃が荒んだ生活に落ち込んだ時だ。
 寂しい思いを重ね、悲しい思いを散々味わったからこそ、心からの喜びを感じられるのだと思う。