国宝 あらすじ 第十五章 韃靼の夢 第351(2017/12/27)~375(2018/1/21)回

春江のこと。
 春江は、同時襲名の準備で、若女将として、一豊の母として大活躍している。気がかりなのは、時々丹波屋へ顔を出す松野のことである。

松野と春江のこと。
 俊介は、長男豊生を自らの腕の中で失い、生きる気力を無くして薬物に手を出し廃人となりかけていた時期があった。その頃に、春江一人では、俊介の世話が手に負えなくなって、故郷長崎の母に救いを求めた。長崎の母の元で、暴れようとする俊介を押さえつけたり、闇医者の手はずを整えたのが、すっかり老いていた松野だった。
 松野は、春江が三歳のころ、母と所帯を持ち、春江が五年生になるまで一緒に暮らした。その意味では、松野は養父である。しかし、春江にとって、松野との生活にいい思い出などなく、酒に酔っては母や自分を殴り蹴った男という恨みしかなかった。その母は既に亡く、十三回忌を迎える。

喜久雄と徳次のこと。
 徳次が、中国大陸に渡るという決心を喜久雄に話す。むろん、喜久雄はそれを止めるが、徳次が考えた末のことであることをも感じる。
 喜久雄の『国姓爺合戦』の後見を最後として、徳次は誰にも知られぬように姿を消した。喜久雄へは、「坊ちゃんには芸の道を極めてほしい。日本一の女形になってほしい」との言葉を残す。

一豊と綾乃のこと。
 一豊は、大学進学の希望を持ち、歌舞伎の舞台とともに勉学にも励んでいる。
 綾乃は、大学卒業を控え、念願の出版社への就職内定を決め、喜久雄と市駒を喜ばせる。また、綾乃は相撲への興味を持ち続けていて、それも喜久雄にはうれしいことである。

俊介のこと。
 襲名披露へ向けてのあれこれが本格化する以前の舞台で、俊介は足のわずかな異変に気付くが、重大なこととは思いもしない。
 丹波屋二代同時襲名公演(俊介が五代目白虎を、息子の一豊が二代目半弥を襲名)は、世間の注目を浴び、千穐楽までのチケットはほぼ完売となる。その襲名公演の初日の幕が上がる。襲名の口上で、俊介は、嗚咽を堪え切れなくなりながらも、父への親不孝の悔いと亡き長男への思いを吐露する。