国宝 あらすじ 第十七章 五代目花井白虎 第401~425回

 俊介は、残った片足をも切断せねばならなかった。
 両脚を失うことを突き付けられて、舞台復帰に絶望していた俊介に、「俊ぼん、旦那さん(先代白虎)はな、最後の最後まで舞台に立ってたよ」と喜久雄は言う。(第十六章)

 両脚を失い、義足に慣れるためのリハビリに励む俊介が、喜久雄の楽屋を訪れる。俊介は、舞台に戻りたい、その復活の舞台の演目は『隅田川』で、班女の前は自分が演じ、舟人を喜久雄にやってほしい、と相談する。
 喜久雄は、今の俊介の状態では無理であると思いながらも、俊介の糖尿病が悪化していることも知っていたので、「なんでもやるから、連絡しろよ」と返事をする。

 俊介は、『隅田川』の稽古に喜久雄との二人三脚で必死で取り組む。しかし、俊介の体調は日を増すごとに悪くなっているのが明らかで、それを喜久雄も春江もよく知っている。
 復帰公演となる『隅田川』の初日は、どうにか開いたというのが妥当だった。しかし、初日の幕が上がってみると、これまでにない新解釈の『隅田川』は、絶賛の拍手を受ける。それは、両脚を失った役者の演技が同情されるのではなく、舞台から溢れ出てくる子を失った女(俊介演じる班女の前)の悲しみに対してのものであった。
 千穐楽の三日まえには花道で立てなくなる醜態もあった俊介だが、まさに気力だけで一ヵ月公演を勤め上げた。
 この復活公演のあと、俊介は緊急入院、そして、喜久雄が借りてやった鎌倉の別荘で長期療養となる。その俊介に、先般の『隅田川』の演技に対して日本芸術院賞の受賞が知らされた。春江と病床の俊介は、手を取り合って受賞を喜んだ。 
 俊介は、なんとか体調を整え、授賞式に車椅子で参加することができた。
 
 『京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)』をやっている喜久雄に、俊介の病状の悪化が知らされる。そして、舞台への出を待つ喜久雄に、俊介が亡くなったとの知らせが届く。
 喜久雄は、出会ったばかりころの俊介と自分を思い出しながら、舞台を勤める。舞台を勤めながら、今は亡き人となった俊介に、演技の相談をする喜久雄だった。
 「なあ、俊ぼん、ここなんやけどな、もうちょい右足まえに出したほうが迫力出るような気ぃすんねんけど、どない思う?‥‥なあ、俊ぼん」