国宝 あらすじ 第十八章 孤城落日 第426(2018/3/14)~450(4/7)回
 
 喜久雄は、亡くなった俊介から息子一豊(二代目花井半弥)の面倒を見ることを頼まれていた。喜久雄は、俊介に頼まれるまでもなく、一豊の後見人となることを心に決めていた。だが、俊介亡きあとの一豊の舞台に取り組む姿勢は、喜久雄を満足させるものではなかった。(第十七章)

 当代の若手歌舞伎役者が一堂に会する新春花形歌舞伎で、一豊は『三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)』の和尚吉三をやっている。
 その一豊が、泣きながら、自分の運転で人を撥ねた、と春江に言う。それを聞いた春江は、近所に住まわせていた松野の部屋へ駆け込む。そして、松野に、「いっぺんくらい、うちのために働いてえな!一豊が人撥ねてしもた。そこで‥‥」と言う。松野は、「その車運転してたん俺や」と答える。無言で着替え始めた松野の姿を呆然と眺めながら、春江に、もしかするとこれで一豊が助かるかもしれないという期待が浮かぶ。
 ふと憑き物が落ちたように春江は立ち上がり、一豊が人を撥ねたという公園へ駆け出す。その公園には、救急車と警察官に囲まれた一豊の姿があった。

 一豊が人を撥ね、一旦はその場から逃げたが、すぐ現場に戻ったこと、被害者は命に別状はないこと、などが寝ていた喜久雄に知らされる。知らせを受けた喜久雄は、三友の社長竹野の指示で社長とともに、一豊が起こした轢き逃げ事故について謝罪の記者会見を行う準備に入る。
 謝罪の記者会見と同時に、三友側と後見人の喜久雄は、一豊を無期限の謹慎にする決定を下す。
 その謝罪会見で、深々と頭を下げる喜久雄の姿が皮肉にも世間に好感を与える。
 被害者である学生は、事故の怪我から順調に回復した。また、事あるごとに見舞いを重ねていた喜久雄は、学生やその両親から逆に恐縮されほどであった。裁判では、被害者の学生本人が過失を認めてくれたので、一豊は有罪とはいえ、執行猶予がついた。


 一豊が起こした事故の件が一応の結果を見たあと、喜久雄が取り組んだのが『沓手島孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)』の淀の方の役である。この役への喜久雄の意気込みは相当なもので、その演技は、「三代目半二郎が歌舞伎を超えた」とまで、世間を賑せ、世界的な賞賛を受ける。
 舞台の評価が高まれば高まるほど、喜久雄は孤高の存在になっていき、まるで喜久雄の楽屋だけが異世界にあるような雰囲気さえ醸し出すようになる。
 このころから、喜久雄は、舞台以外の生活で、奇妙ともいえる行動を見せ、妻の彰子を心配させるようになった。