国宝 第十七章 五代目花井白虎 第401(2018/2/17)~425(3/13)回 感想

 両脚を失いながら舞台に立ち続ける俊介、五代目花井白虎に歌舞伎役者としての執念を感じる。ようやく、舞台に出ているという体調ながら、その演技が観客の心を打つのは、喜久雄と二人での役作りがあったからだと思う。

 俊介の死は、悲しい。それ以上に悲しいのは、俊介がいなくなったことを痛感する喜久雄の心情だ。いなくなって、はじめて、俊介が喜久雄の役者人生に、どれほど深くかかわっていたかに気づかざるをえなかったことが伝わってくる。

 聞こえてくるのは、まだ出会ったばかりのころ、二人乗りした自転車の錆ついたブレーキの音。
「俊ぼん、家戻ったら、すぐに京都に出発やろ?」
「このまま駅に直行やで。源さんが俺らの荷物持って待ってるわ」
 あの自転車で、二人はここまで走ってきたのでございます。(第十七章 五代目花井白虎 24 424回) 

 喜久雄が厳しい稽古に耐えられたのも、俊介がいたからなのだと、読み手としても気づかされる。