国宝 第十八章 孤城落日 第426(2018/3/14)~450(4/7)回 感想

 一豊の事故のことがこの章の中心だ。しかし、春江のことが一番心に残った。
 春江は、長崎で刺青を入れた頃から自分の運命を呪い、その運命に負けまいと生きてきたと思う。自分の辛かった過去を象徴する存在が松野だっただろう。だから、薬に溺れた俊介を救う手助けをしてくれた松野に感謝することはできず、松野が丹波屋に出入りすることを疎ましく思い続けていた。
 一豊の危機を救うために、松野を犠牲にしようと咄嗟に思いついたのは当然の成り行きだろう。それは、春江にとって、松野への復讐でもあったと思う。そして、松野は、それを理解し、春江と一豊のために犠牲になることを承諾した。
 ところが、春江は、自らそうすることを踏みとどまった。恨んでも恨みきれない相手に仇うちをしなかった。
 自分を苛め抜いた相手への復讐が価値のないこと、さらに、愛する子を救うために不正をはたらくことの愚かさを、悟ったのだと感じる。


 これは、喜久雄が、姉川鶴若へ救いの手を差し伸べたことと一致する。