朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第494回2018/5/23

 「お嬢へ天狗より」(489回)のときから、徳次にあえると思った。

 期待が裏切られるかもしれない恐さに、徳次が帰って来たに違いないと言い出せなかった。
 
 もう、大丈夫だ。
 徳次が帰ってきた。
 しかも、帰ってきたわけも、まだ歌舞伎座に到着していないわけも、すっきりとわかった。