朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第499回2018/5/28

 綾乃のことを見知っている観客は、少なくないはずだ。その綾乃がなりふり構わず、一人で拍手をした。
 春江は、俊介のライバルをまだ生まれぬ孫に見せた。
 綾乃も春江も、今が、喜久雄の最後の舞台だと直感したのだと思う。

 
 
 劇場の隅で、喜久雄の背中に、私も拍手する。