たとえ、喜久雄が正気を失い、今までのようには舞台に立てないとしても、心配はないと思う。
 喜久雄の社会的な面は、三友社長の竹野と中国の白河公社社長が万事遺漏なく処理するであろう。そして、身の回りのことは彰子、春江、綾乃が包み込むであろう。一豊、市駒、喜重も、喜久雄がどんな状態になっても大切な人として接すると思う。

 ヤクザの子として生まれ、歌舞伎の魅力に飲み込まれ、歌舞伎役者としての上達以外のことをすべて棄ててきた主人公のこれからは、寂しいものにならないと思う。孤独なものにもならないと思う。
 日本一の歌舞伎役者になることだけを追いもとめていた喜久雄だったが、それだけではない何かかが、喜久雄に描かれていると感じるから。