①どんなときにもへこたれない。
②自分で自分の仕事を見つけて働く。
③切り替えが速く、一度決めたら迷わない。
④この人を支えようと決めたら、とことんその人の面倒をみる。
⑤愚痴や恨み言を言うことがほとんどない。
 小説『国宝』は、歌舞伎役者の物語だ。だから男の物語だ。ところが、女の物語でもあった。
 春江、マツ、幸子、市駒、彰子、この五人の女たちは、魅力に溢れる登場人物だ。そして、この五人に共通する特徴が上の五点だと思う。
①マツは、自分の屋敷を他人に売り、それだけでなく、持ち主の変わった屋敷で女中として働いて喜久雄に仕送りをし続けた。
②春江は、はじめて来た大阪で自分の才覚で稼ぎ始めた。市駒は、喜久雄の世話になりながらも、芸者として働き続けた。
③春江は、俊介に求められて、喜久雄から俊介にのりかえた。
④幸子は、俊介を差し置いて、二代目半二郎の代役を勤めた喜久雄の面倒をみた。
⑤彰子は、喜久雄にだまされたと知っても、泣き言を言わなかった。
 この五人、それに綾乃は、上の五点すべてをそれぞれがもっていると思う。
 夫と子に尽くすといっても、妻だから、母だから、尽くすというのではない。この人を支えようと決めたら、自分が納得できるまでやるということなのだ。また、世間の評判や、自分の体裁を気にする様子がない。人気歌舞伎役者の妻であることや、賞を得た役者の妻であることを誇るような気持ちはまったくないと思う。
 歌舞伎役者としての名を望み、賞や人気を得たいと思い、役者としての理想を追うのは、夫であり子である男たちだ。それを支えた女たちは、現実が突き付けてくる難題を解決し、現実を跳ね返して生きていた。
 ともに生きる女たちがいなければ、喜久雄も俊介も役者として、それよりも人として、人生から早々と脱落していたと思う。
 マツと幸子の充実した老後が描かれていたのも印象に残った。