新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第9回2018/6/9 朝日新聞

 父についての洋一郎の記憶は、姉の言う通り、実際とはかなり違っているのであろう。そして、父についての姉の記憶も、一方的なものだと思う。それは、姉の記憶が、母の側から父を見たものだからだという気がする。
 姉は、父を攻撃する言葉ばかりを言うが、母の愚痴や弱音の聞き役をずうっと勤めるのも苦労なことだと思う。
 
 父はすでに亡くなったと思っていたが、その生死のほどはまだ明かされていない。