新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第12回2018/6/13 朝日新聞

 思い出と過去の記録は、違う。記憶の中でも、思い出は記録とは別のものになるのであろう。
 父がいなくなったことが、洋一郎にとって重い思い出になるのかと予想したが、そうではないようだ。子どものときの洋一郎にとっては、父はこいのぼりを飾ってくれた父であり、万国博に連れて行ってくれた父であるのだろう。
 父と、姉の思い出は詳細なのに、母が登場しないのが不思議だ。