新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第13回2018/6/14 朝日新聞

 賢司さんが、母と姉弟の面倒を今後みるわけではないだろう。離婚した父に対する賢司さんの考え方は、正しい。その正しさは、世間的な良識に照らしてものだし、それよりは賢司さんの好悪に基づいていると思う。
 賢司さんや母の親戚の人たちの行動が、母を救ったことになるのだろうか。はなはだ疑わしい。
 洋一郎にとっての思い出の父は、こいのぼりを飾った父であり、煙草屋のおばさんから「お父さんとお出かけ、いいね」と言われた父であった。母が離婚した父をどう見ようが、賢司さんが離婚した父を悪しざまに言おうが、洋一郎にとっての父は、別の人であったと思う。

 万博には、まだ行っていなかった。洋一郎の反応は、年齢からするとごく自然だ。

 私は、この賢司さんのように自分が持っている良識を自分の兄弟に押し付けるような人を、避ける。私自身がこのような態度をとったことがあっただけに、なおさら嫌だ。