新聞連載小説『ひこばえ』重松 清・作 川上和生・画 朝日新聞 序章 こいのぼりと太陽の塔 あらすじ 

 洋一郎にとって、父の思い出はベランダにこいのぼりを飾ってくれる父であった。
 洋一郎が小学二年のとき、父と母は離婚して、父が家を出て行ってしまった。離婚の原因は、父が金にだらしがないことにあった。
 洋一郎の姉は、そんな父をひどく嫌っていた。
 まだ幼かった洋一郎に、父を嫌う気持ちはなかった。母と姉と洋一郎の三人で行った万博会場の人ごみの中で、洋一郎は、父を見たと思い、その人を追いかけているうちに迷子になるという出来事もあった。

 そんな父と、「私」(洋一郎)は五十五歳になって再会した。