新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第20回2018/6/21 朝日新聞

 美菜のときも、二つ下の息子の航太のときも、仕事の忙しさにかまけて、子どものことは夏子に任せきりだった。

 このことは、私も全く同じだ。幼稚園の送り迎えや、休日に遊ぶことはしたが、それを育児を分担したなどとはとても言えない。だから、孫育てと言われても、どうしてよいか分からないのだ。それは、育児書を読んだり、専門家から教えてもらうことでは到底追いつかない。本物の育児は、経験でしか身に付かないと考える。
 退職した男が、料理教室に通ったくらいでは、家族の毎日の食事の準備ができないのと同様だ。要するに、日本の昭和生まれの男は、育児と家事についてまるでだめなのだと、私は思う。「私(洋一郎)」と私だけかもしれないが‥‥