新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第22回2018/6/23 朝日新聞

 佐山夫妻の活動は、いつまでも発展し続けるものではないだろう。「よしお基金」を起ち上げた動機とその意義については誰にも不服はない。そうであっても、賛同する人々は、佐山夫妻となんらかの個人的なつながりのある人々らしいし、基金の原資は夫妻が出資したものであろう。その状態が六年も続いたことが稀なことだと思う。
 この活動は、ほどなく終えるか、或いは今とは形を変えて継続するか、のいずれかであろう。その時には、佐山夫妻はまた一人息子の死と向き合うことになると感じる。

 独身の紺野の選択、一人息子を亡くした佐山夫妻の今後、そして、もう一つ興味深いテーマが示されている。
 洋一郎は、五十五歳になって離別していた父と再会した。当然、父は高齢になっている。この高齢の父は、なんらかの介護を必要としているのではないか?