新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第24 25回2018/6/25 26 朝日新聞

 悲しいことがあっても、一日経てば、たいていは悲しさは弱まる。めったにない悲しいことがあっても、一年が経てば、そのことを忘れている時間が長くなる。一生に一度と思える悲しみに圧し潰されそうになっても、十年が経てば、その悲しみは薄れる。時間の力には勝てない。悲しさだけでなく、喜びにもこれが当てはまる。

 もし、私が佐山の立場だったら、次のように考えると思う。
 「よしお基金」に賛同してくれた人たち、その中でも芳雄の友人たちに、いつまでも「よしお基金」の活動に、時間や資金を割いてもらうことが正しいことなのか。どこかの時点で、亡き我が子の思い出と「よしお基金」の活動から離れてくれる方が、若い友人たちには必要なのではないか。芳雄もそれを望むのではないか。

 紺野には話さない佐山からの相談とは、なにか?もし、「よしお基金」の活動を終了、あるいは縮小することであれば、紺野に言わない理由を思いつかない。