新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第26回2018/6/27 朝日新聞

 同じ年齢で、学生時代から付き合いが続いていて、現在住んでいる所も共通の三人だが、それぞれの境遇が違う。佐山は一人息子を亡くし、紺野は未婚で子供がいない。洋一郎は結婚して子供が二人いてもうすぐ孫ができる。
 こういう家庭環境の違いがあっても、友達付き合いが続くだろうか。紺野は、洋一郎の孫のことに話題を合わせようとしているが、どこかに無理がある。今までは、ともかくとして、これからは三人がこの関係を維持するのは難しいと思う。

 成人した子供をもつ現代の父親の気持ちがよく伝わって来る。親子の関係もスマホ次第ということだ。 
 SNS抜きでは親子関係も成り立たないという風潮に馴染めない気もするが、手紙や電話での親子のやり取りと、SNSでのやり取りは本質的には変わらないと思う。