新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第27回2018/6/27 朝日新聞

 私の場合も、おおむね同じような悩みを抱えている。都市部に住むサラリーマン共通の悩みだ。住居のこと、つまりは年代に応じた住む場所探しが難しいのは、今の日本の大きな特徴だろう。
 これは、今の社会のどこかがうまく機能していない証拠だと思う。
 だが、庶民が年代に応じて住居を変化させられるとすれば、それは過去の社会では実現しなかったことといえる。子どもを育てる空間のある住まい、夫婦二人が生活するコンパクトな住まい、高齢になっても安全に生活できる住まい、を次々に手に入れることができるとすれば理想的だ。
 しかし、私が見聞きする現実は、次のようなものだ。
 子どもを育てる余裕のある家に住むには長距離通勤などの不便を代償にしなければならない。共働きの夫婦が退職する年齢になっても、その夫婦の子供は未婚であったり、住居の費用を親に援助してもらわねばならない。有料の介護施設、介護サービス付き高齢者住居などに入るには、年金と貯金では不足する。

 私の持ち家は築二十年になった。外壁と屋根は一度直したが、冷暖房機、温水器、サッシ窓、カーテン、塀と次々に修理が必要になっている。また、庭作りを退職後の趣味として楽しんでいるのだが、体力が落ちて来ると、その手入れが追い付かなくなりそうだ。庭を、高齢になっても楽しめるようにするには、とても払いきれないほど金がかかる。

 連載小説を読みながら、頭を抱えることになるとは!