新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第36回2018/7/7 朝日新聞

 『すこやか館』『やすらぎ館』、いかにもありそうなネーミングだ。高齢者を取り巻く社会の変化は目覚ましいが、「老人ホーム」にはまだ暗いイメージが残っている。そういうイメージを払拭するためであろうか、極力明るいネーミングが求められていると感じる。

 介護なしの人たちと、介護が前提の人たちと、入居者の対象が変わると、施設長の仕事内容が大きく変わることを知った。
 介護なしの高齢者も、いずれは介護が必要となる。そうなると、主人公が勤めているような施設では、『すこやか館』から『やすらぎ館』への再入居となるのだろうか?

 格好良く言えば「暮らしの質を高めること」ーー「暮らし」があるっていいですよねえ、と小林さんにはいつもうらやましがられる。

 切実な言葉だ。一時的とは言え、病気によって「暮らし」を失った体験を持つと、このことがよくわかる。