新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第37回2018/7/8 朝日新聞

 高齢者サービスが充実してきている。それと同時に、高齢者サービスがビジネスチャンスでもあるとされるようになった。儲けのタネになるとなれば、悪質な施設やサービスが横行するのは、残念ながら当然のことであろう。
 「高齢者向け○○」というコマーシャルは、たとえ大手のマンション業者や、大銀行のものであっても、ビジネスになるから、高額の宣伝費をかけていると、考えるようにしている。

 洋一郎の仕事内容は、今の現実にはふさわしくないと感じた。私が見聞きする限り、介護なしの入居者対象の施設も、同業との競争は激しく、コストを削る必要が増している。だから、どんな施設も人手不足は深刻らしい。したがって、施設長といえども、食事のサービスやレクの補助などの現場の仕事もしなければならないと聞いている。
 
 建物と内装が豪華な「サ高住」でも、調理や看護師や清掃などのスタッフが人手不足では安住の地とは言えないのではないか。