新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第38回2018/7/10 朝日新聞

「夫婦で入っても、いつまでも二人でいられるわけでもないだろ?どっちか一人になったとき、2LDKだとやっぱり広すぎるしな」

 こういう話は貴重だ。
 今は、若い単身者用と五人未満の家族用の住居は標準化され工夫されている。しかし、高齢者用の住居は、まだまだ値段と見た目が優先されていると思う。
 住まいの収納スペースも、子育て中の夫婦と、家事の大半をサービスに依存している高齢者夫婦とでは根本的に違うはずだ。高齢になり、生活のパターンが変化しているのに、中年の頃の衣類や食器や日用雑貨を捨てられない人もいる。もう使わなくなった品々を持ち続けると、いつまでも中年の頃の住まいの広さを変えられないことになる。それでは、高齢者にとっての快適な住まいとは言えない。
 幼児にはベビーベッドが、子どもには子供部屋が必要なように、老人には老人用の部屋、住居が必要だと思う。
 高齢の夫婦、高齢の単身者にとって、ふさわしい部屋と住居についての納得のいく提案は、今の日本では、まだなされていないと感じる。