新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第40回2018/7/12 朝日新聞

 佐山からの相談事とは、有料老人ホームの件ではないと思っていたが、まさに有料老人ホームへ入居する可能性についての相談だった。
 佐山のように五十代で有料老人ホームに入ろうとする感覚は私にはない。私は、七十歳となり、夫婦ともに継続しての経過観察の必要な病気にかかっているが、老人ホームは、まだ先のこととしている。
 
 同じ五十代でも、洋一郎夫婦も、紺野も、自分が老人ホームにすぐにでも入ろうとはしていない。紺野の場合は、むしろ両親のこととして選択肢の一つになるのではないか。
 
 五十代で健康な夫婦が有料老人ホームに入ろうと決心する理由に何があるだろうか、予測してみる。
①周到な老後の生活設計を立ててそれを実行しようとしている。
②今までの職業とは全く別の仕事や活動に、これからの時間を使おうと計画している。
③今までの人間関係とは無縁な場所で、新たな生き方をしようと考えている。