新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第50回2018/7/22 朝日新聞

 見殺しにされたんだよ、芳雄は──。

 これは、仁美さんだけでなく、佐山本人の思いなのであろう。佐山夫婦の思いは、共感できるし、考えれば考えるほどこのような考え方になると思う。
 しかし、この気持ちを持ち続けたままでは、「よしお基金」の活動を続けても、夫妻の心の傷は癒されない。
 死者を取り戻そうとすることが、周りにいた人たちへの憎しみに変わる。
 死者を取り戻すことを、どこかであきらめねばならないのに。