新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第52回2018/7/24 朝日新聞

 納得した。
 「失独家庭」という言葉を初めて聞いた。
 
 私たち夫婦は、「失独家庭」ではない。
 けれど、私たち夫婦は、老後を自分の子どもと一緒に住もうとは思わないし、自分たちの葬儀は簡素にしてもらうと決めている。また、自分たちが受け継いできた墓を子どもたちが受け継ぐべきだとは思っていない。実際に、私たちは、死んだ親の家の仏壇を、我が家には置けないので小さなものにした。
 だが、老後のことや、死後のことは、子どもたちの世話になるだろうと思っている。だいたい、老人ホームに入るにしても、身元保証人というか、入居予定者の家族がいなくては入居もおぼつかないはずだ。そして、老人の身元を保証する人は、その人の子が優先される。

 五十代にして、老人ホームに入ろうという佐山の考えに納得した。入居の時期が早まった理由についても。仁美さんの気持ちが伝わってくる。それを聞いた佐山の気持ちも。

 「若い奴のいないところに行きたいって、カミさんが言うんだよ‥‥」