新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第53回2018/7/26 朝日新聞

 我が国で、アメリカのような発想で、老人だけのコミニュテイを作る計画が出て来ないのは不思議だ。国による伝統や文化の違いだと言えば、その通りだろう。それだけではないような気もしてくる。現に佐山は、「サンシティ」のような都市を羨ましがっている。
 ひょっとしたら、世界一の高齢化国家であるとされる日本の高齢化対策の遅れている部分なのかもしれない。日本は、過去の村社会と家長制度の下で、老人処遇がうまくいっている面があったので、それをまだ引きずっていると感じる。

 平日の昼のデパートとその近辺、売り出し日の開店早々のスーパーマーケット、そして、高齢者を引き受ける医療機関の待合室と入院病室、客と患者は、すでに老人だけだ。今の日本のそこは、老人だけの街の一部のようだ。