新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第55回2018/7/27 朝日新聞

 私と大学同期の友人の中で、最近最も生き生きとしているのは、孫の世話をしなければならないという人だ。その人は、自分の子どもの子育ては奥さん任せであったが、いろいろな事情から孫を育てる手伝いをしなければならなくなったという。そして、孫の世話をする大変さを話して尽きることがなかった。大変だと言いながら、声も表情も明るかった。
 男性でもそうなのだから、夏子のように育児の経験の豊富な女性は、なおさらだろう。
 老後は悠々自適などというが、家族に頼りにされ、忙しくしている人の充実感には及ばないと感じる。