新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第56回2018/7/28 朝日新聞

 この小説のストーリー展開は、平坦な感じだ。淡々と話が進んでいるが、各章の話題は広がっている。
①別れた父への洋一郎の思い出。
②洋一郎と大学同期の佐山、紺野の事情。
③一人息子を亡くして七年経った佐山夫妻の事情。
④洋一郎の娘の出産が間近なこと。
⑤別れたままの父と洋一郎が再会すること。
 上のような題材が、序章から第二章で出てきている。これらの題材は、バラバラのようで相互に関連づいてくるのであろう。
 「第三章 父、帰る」では、①と⑤の題材が発展しそうだ。
 
 
 五十代後半の男性のあいまいな立場が描かれていると感じる。
 職場ではすでに第一線から外されている。家庭では、まだ現役で働いているので疎外されているわけではない。でも、父としても夫としても、祖父としても、重みのある存在とはなっていない。
 定年退職はまだなのに、もうなんとなく厄介者扱いのようだ。洋一郎本人もそれに気づいているのであろう。
 洋一郎のこの感覚がよくわかるだけに、読者としてもなんとなくさびしい気持ちになる。