新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第61回2018/8/2 朝日新聞

 意外な展開だ。
 高齢になって、生活に困った父親が現れるのかと思った。それが、死んでいたとは!
 少なくとも、自分たち姉弟を捨てた父の介護をしなければならないという状況ではなかった。
 でも、洋一郎にとって、父が完全に思い出の中の人になったというだけではあるまい。いとこが、姉に電話をしてきた理由、そして、姉の厄介事を抱えたような口ぶりには、何かわけがあると思う。

 この小説は、やはり今を描いている。
 家族を捨てたとはいえ、実の父、その父に対して思慕の感情なり、逆に憎しみなりをもつのが、以前の日本人だったといえよう。
 ところが、洋一郎と姉は、憎しみさえなく、無関心ととれる感情をもっている様子が描かれている。