新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第62回2018/8/3 朝日新聞

 洋一郎の実の父が、いかに身内に迷惑をかけて、嫌われていたかがわかる。
 それにしても、姉の言いぶりは徹底している。自分たち姉弟を捨てたといっても過言ではない父ではあるが、亡くなった父に対して、一片の感傷的な気持ちもない。姉が感情に流されない人であるのか、それとも実の父がそれほどひどい人であったのか?

 疑問がもう一つある。第17回に次のようにある。

 そんな父と、私は五十五歳になって再会した。

「父との再会」とは、父の死を知らされたということだけを指しているのか?