新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第66・67回2018/8/7・8 朝日新聞

 母の再婚相手は、母にとっても洋一郎にとっても悪い人ではなかったようだ。悪い人ではないが、再婚の事情は、母と義父とでは違っていた。恐らく、母は、再婚相手長谷川隆さんの亡くなった先妻のことに神経を使って生活したであろう。
 洋一郎も、義父と義父の子たちと心から打ち解けた関係になれなかったようだ。
 洋一郎と姉と母の三人と、隆さんと一雄さんと雄二くんの三人は、新しい六人家族となっても、どこかにそれぞれの血のつながりを感じながら暮らしていた気がする。